本を巡る雑感
仕事帰り東京駅北口の丸善に寄ってきました。活字離れと言われる中、こんなにたくさんの本とそれを求めに足を運ぶ人の多さに改めて感慨深いものがありました。
私は割りと好きな本を何度も読み返すのですが、若いころ、夢中になって読んだ作家を今読み返して、新たな発見とまではいかなくても「ああ、やっぱり良いな」と思う作家と、飽きたなと思う作家がありますよね。
最近、栗本薫の本を再読して、魅力を感じなくなっていることに気づきました。伊集院シリーズ、あんなに好きだったのに、面白く無いんですよね。一方、宮部みゆき、都筑道夫(なめくじ長屋物、退職刑事物・・・)、岡本綺堂(ご存知半七捕物帖)は、何度も何度も読んでいます。好みが変わっていくのか、変わらない部分もあるのか、不思議です。
このように同じ作家のものをずっと読んでいくことが多く、特に最近は初めての作家本は手にしてこなかったのですが、昨年来新たな開拓をしているかもしれません。昨年凝ったのは三浦しおん。『舟を編む』を口切り『まほろ駅前多田便利軒』『風が吹いている』とか読みました。
今年は、BSプレミアムのドラマ『鴨川食堂』の原作を読みました。
ドラマも毎週面白く観ているのですが、友人のブログで、原作があり作者が柏井壽だと知って読んでみようと。そう、先日京都本のことを書いたのですが、『京都 奥の迷い道』の作者だったのです。この手の京都紹介が専門だと思っていたので、フィクションを出しているとは知りませんでした。ドラマも結構良くできていると思うのですが、原作も良かったです。昔食べた思い出のメニューを作って欲しいという依頼を元に、鴨川食堂の父娘が再現して供するという物語です。「亡くなった妻が作っていた鍋焼きうどん」とか「別れた夫が経営していた店のトンカツ」とか、その人の思い出の中にしか存在しないメニューを、食べた時の状況や住んでいた町などを手がかりに再現するというもの。再現した過程を説明していくくだりは一種の謎解きになっていて面白いし、食堂で出す料理の材料やそれを盛り付ける器へのこだわりなども興味深い。ドラマでは、器やセッティングがちょっと雑で残念です。ドラマは次回が最終回みたいですが、本は『鴨川食堂 おかわり』『鴨川食堂 いつもの』という続編があるので、続けて読もうと思います。
新聞の書評で興味を持ったので、講談社タイガ文庫の『雨の日も神様と相撲を』(城平京著)も読みました。神様がカエルで男性は相撲を取らなければならないという決まりがあり、カエル様のおかげで常に質の良い米が豊作である農村に引っ越してきた中学生の男子が主人公。彼は東京でずっと相撲道場に通っていたが、身体が小さく細身なので相撲取りにはなれない体格だが、理論と技術は一級品なので同級生や村人、はたまたカエル様にまで相撲の指導をするはめに。途中までは同級生や村人との応酬、刑事である叔父が担当する死体遺棄事件、相撲とカエルに関しての村のマイルールなど、テンポよく面白く読めました。その分、オチというか終盤がちょっと尻すぼみ的なハッピーエンド状態になってしまったのが少々残念。これだけ特殊な設定にしたのだから、もっととんでもない終わり方を期待したのですが。
さあ、明日の通勤電車で何を読もうかな? おやすみなさい。
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